鳩 Pigeon

『鳩 Pigeon』行定勲監督

解説

『カメリア』『真夜中の5分前』でアジアの映画人たちと協働した経験を持つ行定勲監督が舞台に選んだのは、多くの日本人高齢者が実際に暮らしているマレーシア・ペナン島。鳩を飼う孤独な老人(津川雅彦)を中心に、息子(永瀬正敏)との確執や介護ヘルパー(シャリファ・アマニ)とのふれあいが綴られる一方、太平洋戦争の遠い記憶も挿入されている。アマニの役名「ヤスミン」には、行定監督が敬愛するマレーシアの名匠、故ヤスミン・アフマド(『細い目』)へのオマージュが籠められている。ペナン島の中で世界遺産に指定されている街・ジョージタウンでの撮影には、ウー・ミンジン、エドモンド・ヨウらといったマレーシア映画界で活躍する若手映画制作者たちが協力した。

あらすじ

マレーシア・ペナン島。田中道三郎は二階建ての大きな家でヘルパーたちに付き添われて暮らし、屋上の鳩舎で鳩を飼っている。息子の雅夫は月に一回、日本からやってくるが、冷淡にもすぐ帰ってしまう。ある日、新しいヘルパーのヤスミンが雇われ、道三郎の世話をすることになる。さまざまなトラブルの末に二人は心を通わせていく。道三郎はヤスミンとその恋人アリフの手を借りて、兄たちが戦死した海辺へ行き、鳩を大空に放とうとする…。

キャスト

田中道三郎役:津川雅彦
田中道三郎役:津川雅彦

1940年1月2日生まれ。1956年に日活映画『狂った果実』(中平康監督)で、本格的な俳優デビュー。主な出演作に『ひとひらの雪』(85年/根岸吉太郎監督)、『マルサの女』(87年/伊丹十三監督)、『墨東綺譚』(92年/新藤兼人監督)、『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(94年/深作欣二監督)、『プライド・運命の瞬間』(98年/伊藤俊也監督)、『0.5ミリ』(14年/安藤モモコ監督)、『ソロモンの偽証 後篇』(15年/成島出監督)、『後妻業の女』(16年/鶴橋康夫監督)、『たたら侍』(17年公開予定/錦織良成監督)など、二枚目から悪役まで、幅広い役柄をこなす演技派俳優として活躍。また、マキノ雅彦名義での監督作品に、『寝ずの番』(06年)、『次郎長三国志』(08年)、『旭山動物園物語』(09年)がある。

ヤスミン役:シャリファ・アマニ
ヤスミン役:シャリファ・アマニ

マレーシア出身。女優、監督、脚本家、著述家として活躍しており、複数の賞に輝く。主に名監督の故ヤスミン・アフマドとのコラボレーションで知られており、同監督による『細い目』(TIFF2005上映)、『グブラ』(TIFF2006上映)、『ムクシン』(TIFF2006上映)、『ムアラフ―改心』(TIFF2008上映)の4作品への出演で本格女優としての地位を確立。監督の遺作『タレンタイム』(TIFF2009上映)では助監督を務めており、自身でも『サンカル』、『カンポン・バンサー』、『イヴ』(いずれも短編)を監督。その他の出演作には、『Psycho Pencuri Hati』(ナムロン監督)、『ノヴァ~UFOを探して』(TIFF2014上映)、『Pekak』(2016)がある。細井尊人監督『クアラルンプールの夜明け』では日本映画への出演も果たしている。

田中雅夫役:永瀬正敏
田中雅夫役:永瀬正敏

1966年7月15日生まれ。映画『ションベン・ライダー』(83年/相米慎二監督)でデビュー。89年、ジム・ジャームッシュ監督作『ミステリー・トレイン』で世界的に注目を集める。『息子』(91年/山田洋次監督)、『学校Ⅱ』(96年/山田洋次監督)、『誘拐』(97年/大河原孝夫監督)、『隠し剣 鬼の爪』(04年/山田洋次監督)で日本アカデミー賞での主要賞他数々の映画賞を受賞。これまでの出演作は90本にのぼる。『私立探偵 濱マイク』シリーズは映画テレビ共人気を集めた。近作では、金馬賞・主演男優賞で、中華圏以外での俳優としては初ノミネートになった『KANO~1931海の向こうの甲子園』(14年/馬志翔監督)。カンヌ国際映画祭正式出品作品『あん』(15年/河瀬直美監督)、『十字架』(16年/五十嵐匠監督)、『蜜のあわれ』(16年/石井岳龍監督)、『64-ロクヨン-前編・後編』(16年/瀬々敬久監督)、『後妻業の女』(16年/鶴橋康夫監督)などに出演。今後公開作に『パターソン』(ジム・ジャームッシュ監督)、『ハピネス』(SABU監督)他。また写真家として多くの作品を発表している。